煙管さえあればご飯大盛り三杯はイケる
煙管したいなら、しっかり選ぼうよ
「…はい。申し訳ありません。母様」
「…ったくしようがない子だねぇ…和也の旦那様達から苦情が来ている。お前もこのまま知らん顔してるつもりじゃないんだろう?」
「はい」
「どう落とし前をつける?」
フフと笑った母様が煙管をトンと火鉢の縁で響かせた。
和也を逃げ出させてから、その事がバレるまではあっという間だった。
まず最初に美代が居ない事に気づいたらしく、オロオロと店内を探し回り始めた。
美代は喋られないから、探していたんだろうけど、誰かに聞く事もできないから不安だったと思う。
知ってる人間は少ない方がいいと思っていたから、美代にも伝えなかった。
あまりに狼狽して泣き出しそうになっている美代に気づいた時、美代にだけは口外しないのだから伝えれば良かったと後悔をした。
だけど、智が「知っていたらもっと心配するだろう」って言ってくれて。
「お前の判断が間違っていた事はない」と言ってくれたから。
それで少し心持ちが安定した。
その後、世話をしていた女中が騒ぎだし、つられて付いていた稚児たちも騒ぎだした。
特に稚児たちは和也にとても懐いていたので、姿を追って探して泣いて。
大変だったと…他の遊女たちが零していた。
その他の遊女たちも。
普段は和也と一線を画していたけれど、心根の優しい和也の事はみな気に入っていたみたいで、どこかの旦那様と逃げたのだとウワサしては「良かった」と本音を漏らしていた。
店にいる女中や下足人や、下男果ては用心棒までが和也を心配して、そして…密かに逃げ出した事に安堵していた。
無事かどうかが分からない事が心配ではあったけど。
そして母様は…
怒る訳でも、もちろん嘆く訳でもなくて。
騒ぐ事すらしなくて、すぐに俺を呼びつけた。
何もかも分かっていた母様の前では何の誤魔化しもきかなくて…
素直に謝罪を口にする。
「どのような処分も…」
「そうかい。じゃあ…連れ帰ってくるんだね」
「…はい?」
「和也を探して連れ帰ってくるまで、ここへの出入りは禁止だよ。何年かかろうとも連れてくるまでは帰ってくるんじゃないよ」
「…それは…」
それはこの仕事に戻らなくてもいいと、そういう事で…
ここから解放するという…そういう事で…
だけど…俺は…智がいる限りは…
「ですが母様、私はここで…」
「ああ、それから…どうせ智も一枚かんでるんだろう?」
「あ…っと…はい」
「じゃあ智も一緒に探しに行くんだね」
俺の言葉を聞かずに母様はそう言う。
「母様」
「2人でゆっくりと探してくればいいさ、私は和也が戻ってくればそれでいいんだからね。出来るなら私が生きてる間に連れ戻してくる事を願っているよ」
フフフと笑った母様の真っ赤な紅を見つめる。
「…ははうえ」
「サッサとお行き」
普段は呼ばない呼び方でそう呼んで。
僅かばかりに側に近づいた俺に、母様はシッシッと手を振って。
後はもう興味が無いとばかりに、机の上の帳面に視線を落とした。
煙管 日本に京都があってよかった
これから車に乗せて帰りまする。
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「あの男。初会で抱かせろやなんて野暮な話でありんしょう?」
「ふふふ、ほんになぁ。しきたりもしらん野暮なおたんちんは相手せんにかぎりんす」
(くすくすと笑い声が漏れる。煙管の先に… https://t.co/0V7B9p8CHp