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夜釣りから帰ったのが何時だったか
もう眠くて眠くて
シャワーが精一杯だった。
目が覚めたらカズはいなくて
最初に見たスマホにも
なんもねぇ。
やべっ、って思ったって
もう遅い。
カズがしかめっ面で
涙目になってんのが目に浮かぶ。
リビングのテーブルにも
ダイニングテーブルにも
メモすらねぇし。
ま、そんな日もある。
カズのご機嫌取りをするつもりはない。
元々、したことねぇ。
と、思う。
かわいくて甘いだけ。
それは昔からだ。
マネに電話しようとして、やめた。
全部の窓を開けて
洗濯機回して
ビール開けた。
カズが幸せかどうかなんて
あんま気にしねぇけど
笑って泣いてカズらしくいて欲しい。
オイラはカズと生きて
カズと気持ちいいことして
カズと飯食って
カズと歌って。
そんな毎日が繰り返されたら
幸せだと思う。
でもさ、
当たり前のことなんて
何ひとつないんだよ。
いつものスーパーで
いつもの時間に
いつもと同じ豆腐がない日だってある。
きっと人生は
それと同じだ。
「起きた?」
震えたスマホの画面には
一瞬で頬が緩むひとことが見えた。
「ん、洗濯干したよ」
すぐに既読になって
電話がかかってきた。
「おーのさん、会いたい」
「オイラも」
「うん」
「ごめんな、朝起きなくて」
「起こさなかったもん」
「そうか」
今すぐ抱きしめて
今すぐキスしたい。
誰もそばにいねぇって
わかるような甘えた話し方に
オイラも付き合いてぇけど
しっかりさせてやる責任があるからさ。
「しっかりやれよ、カズ」
「うん」
「おまえらしくな」
「うん」
「待ってるから」
「愛してるって
言ってくれないの?」
甘えたいカズを
甘やかすのがオイラの趣味みたいなもんで
今はまだ
甘やかしてやりたい。
キャリアだとか
求められる技量だとか
カズが重きを置いてねぇ部分を求められて
アイツはひとりで戦うからな。
誰だってそうだけどさ。
「愛してるよ、和也」
世界一、愛してる。
おまえがオイラを求めるなら
オイラは応えてく。
ご機嫌取りはしねぇけどな。
「オレも愛してる」
「ん、がんばれ」
「はい」
夏みてぇな空と
秋みてぇな気持ちと
なんとなく長い午後。
さ、風呂掃除しようかな。
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