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その家はサリーちゃんの館と呼ばれていた。町はずれの小高い丘の上の古い洋館だ。今はだれも住んでいないのだが、その家に近づくと大人たちは、ものすごく怒った。
サブロウとケンタは夏休みのある日、この館を探検する計画を立てた。サリーちゃんの館の中に入ったとなれば、子どもたちの中ではヒーローだ。
門はしまっていたが塀を乗り越えるのは簡単だった。2人は玄関を探してその家をひと回りしたが、不思議なことにその館には入口がなかった。玄関らしきところにも、裏の勝手口らしきところにも、レンガの壁があった。そこだけ、とってつけられたような新しいレンガの壁だ。入り口も出口も完全に封鎖してあるのだ。う上を眺めると、2階に小さな出窓があり、人形のようなものが飾ってある。あれがサリーちゃんだろうか? だが、あそこまで登るのは不可能だ。「窓をわるしかないかな。」 サブロウが言った。「うん、ここまで来て帰れないよな。」 ケンタもうなずいた。
中に入ると、湿っぽいいやなにおいがした。思ったより暗い。「おい、ビデオ持ってきたか?」 「ああ、スイッチ入れっぱなしにするぞ。」 ケンタはビデオカメラの電源を入れた。何といっても、探検には証拠というものが必要だ。「おじゃまします。」 サブロウが恐る恐る言った。当然返事はない。「大きな家ですね。」 「サリーちゃんって子はいますか?」 2人はいちいちしゃべりながら、前に進んだ。
階段のところになにやら文字のようなものが見えた。近づくと「たすけて」と書いてある。そして壁に矢印があり「こっち」と書かれている。2人はゆっくり階段を登った。階段を登りきるとそこには3つのドアがあった。中央のドアには「はやくきて!」と書いてある。右側のドアには「足はこっち。」とある。そして左側のドアには「頭はこっち。」と書いてある。
2人が顔を見合わせたとたん、天井の方から「パーン!」と竹を割ったような音がした。その音とほぼ同時に、サブロウが階段を転がるように降りだした。ケンタもあわてて逃げる。「お、お邪魔しました!」 2人はそう言って館の外へ出た。
やっとのことで家に帰りついたが、二人の心臓が普通に戻ったのはそれから1時間もたった後だった。「あ~、びびった~。」 「あの音、なんだったんだろう?」 「おい、ビデオに何か映ってるかな。」 ビデオを再生する。家の中は暗く画像は鮮明でない。「おじゃまします。」 サブロウの声だ。「どうぞ。」 そのあとに聞いたことのない女の声がする。誰かの声が録音されているのだ。
「おじゃまします。」
「どうぞ。」
「大きな家ですね。」
「そうですか。」
「サリーちゃんって子はいますか?」
「ええ、いますよ。」
そして、あの「ぱーん」という音。階段を駆け下りる音。
「おじゃましました。」
「まてー!」
2人の心臓がまた早くなった。
ちょうどそのとき、ケンタの母親が部屋に入ってきた。飲み物を持ってきてくれたらしい。「ねえ、ケンタ。さっき変な電話があったわよ。」 母親はいつもの笑顔だった。「なんか、自分の名前を言わないのよ。ケンタ君いますかって。若い女の子みたいな声でね。伝言お願いしますっていうのよ。」 「うん、それで?」 「絶対に連れ戻すだって。あんた、なんかその子に悪いことした?」 母親はそう言いながらまた笑った。