第1章 2020年入試改革と受験学力
第2章 受験テクニック再考
第3章 学力と日本の教育について考える
第4章 受験勉強でどんな能力が身に付くのか
第5章 受験学力格差はなぜ起こるのか
本書の主題ではないのですが、終盤にサラっと書いてあった以下の文章
について。
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なぜ、こんなに灘が強いのか以上に、なぜこんなに東京がダメなのかのほうに私は注目した。
結論的に言えば、カリキュラムの差だった。
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これをなぜ東京の学校がやらないのかを疑問に感じていたし、これをやれば東京の学校からでも理科三類の合格者が増えるだろうと考えて、大学5年生の時に塾を始めた。
これが今も東京大学理科三類に圧倒的な合格実績を誇る鉄緑会である。
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和田秀樹さんは、鉄緑会を立ち上げた方でいらしたのですね。
全く存じ上げず・・・。
和田秀樹さんは受験の神様と呼ばれているそうですが、そのメソッドに沿って学習したつもりなのに、思うように成績が上がらない方々が「被害者の会」を結成されているそうで、そういう現実を受けて、”合わなかったら、他の方法を模索して下さい”という旨、添えることにされたのだそうです。
受験は結果を伴うものだけに、藁をもすがる思いで”良さそう”なメソッドに飛び付きがちで、ブログ界も例外ではないですよね。
でも、そもそも、万人受けするメソッドなんて存在しない訳で、そこを認識した上で、我が家には/我が子には、どのような手段がフィットしていて、その手段をどう纏ってどの方角を目指すのか、他人に流されることなく取捨選択していかなくてはいけないな、と思う今日この頃。
加えて、取捨選択したらその選択から先は自己責任だと腹を括らねば等々、考えさせられるエピソードでした。
謙虚さが欠如したモノ言いも、他責思考も、何れも反面教師にしたいと思います。。。
個人的には、和田秀樹さんの「受験テクニック」のうちの一部は何冊ご著書を読んでも賛同できず(苦笑)、それは目指すゴールや価値観が違うからだと思うのですが、そういった”気持ち悪さ”は排除して、共感できる箇所だけを取り入れる前提で読むと、色々と参考になる記述がありました。
以下、備忘録のメモ書きです。
的外れな根性主義が子供を潰す(p.69~73)
努力しているのに合格できない人間がいるから、受験競争が可哀想だという人もいるが、私に言わせれば、それは、的外れな努力をしているからであって、きちんとテクニックを教えた上で、努力をさせれば、多少時間はかかっても必ず結果が出ると信じている。
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勉強の場合は、ほとんどの子供が自己流だ。
ノートのとり方がめちゃくちゃだったり、前には進むが復習をしないとかで、勉強をやっている割に成績が伸びない子は少なくないだろう。
そして、そういう子の多くは、やり方が悪いとは思わず、頭が悪いと思って勉強からドロップアウトしていく。
実は、高校生の時にそれを実感したことがある。
高3の夏、このままいけば合格できそうだと思って、私は図書館で勉強することにした。
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ところが、図書館に行ったら、とてもナンパできる雰囲気ではなかった。
何十人も子供が一心不乱に勉強している、
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その時に、下手をすると、夏休みのうちも彼らの何人かに追いつかれたり、抜かれることもあるのではないかと心配した。
ただ、2日もしないうちに、逆に、合格できるという確信が強まった。
というのは、そこにいる受験生たちは、それだけ勉強しているのに、数学の問題集が一日に2、3ページしか進んでいないのだ。
古文を一生懸命ノートに書き写している子もいた。
こんなやり方では時間がいくらあっても足りない。
これではとても合格できないと確信したわけだ。
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スポーツなら当たり前に教えるように、やり方を教えることで多くの子供が救われるというのは私の信念だ。
和田式受験勉強とは(p.74~75)
目標を偏差値を上げることに置かず、志望校の合格最低点に置く
志望校の合格者最低点と、今の自分の学力のギャップを埋める勉強をする。
勉強時間より勉強量を重視する
何時間やったかではなく、どれだやったかで決まるのである。
和田式では「数学は暗記だ
」といっているが、これはスピードアップのテクニックの一つである。
できる子が1問10分で解ける問題を、1時間かかって勉強していたのでは勝ち目はない。
しかし、5分考えて分からなければ答えを見て、その解答パターンを覚えて点数を上げられるのなら、秀才の受験生に勝てる。
英語に関しては、速読のトレーニングを重視している。
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記憶に定着させることを重視する
復習を実践する
暗記数学再考(p.87)
暗記数学には3段階ある。
計算力
私の場合、小学3年生で3級になった算盤と、中学受験のおかげで計算力が鍛えられていた。
計算が速くて正確なほうが、センター試験も含めて有利なのはいうまでもない。
暗記力
解答が理解できないなら、問題集のレベルを下げ、解答が分かりやすいものを選び、前述の計算力のトレーニングを平行して行うことでかなり解決する。
試行力
ベクトルならベクトル、数列なら数列の問題を50問覚えたら、実際の入試問題を解いて、覚えた解答を「使う」ことが必要だ。
その際、一回目に思いついた解答を使って解けるとは限らない。
あれこれと試して解答に辿り着くのだ。
受験テクニックを教える(p.98~99)
和田式勉強法では、
合計点主義
合格点主義
をもっとも大切にする。
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受験テクニックを知らないがゆえに、名門大学に入れないのは残念な話だし、受験テクニックの意味を子供に教えることは、その子の後の人生にも役立つはずだ。
ミスをした場合には、同じミスをしないようにすることが一番大切
模試の偏差値を上げることより、志望校の過去問で合格者の最低点に近付くことのほうが大切。だから、周囲の人間をライバルと考えるより、点数を上げるための協力者と考えたほうが受験はうまくいく
満点を取れなくても合計点で合格できるし、苦手にこだわるより得意を伸ばしたほうがいい
大学で身に付けるべき学力とは(p.141~142)
確かに日本の一流レベルの大学にいれば、論文を書く能力やディスカッションを行う能力などは多少鍛えられる。
前述のように名門グラジュエイトスクールに留学しても困らないというのも、ハードな受験勉強を切りぬけてきただけが理由ではないだろう。
日本と比べて、外国では、やはり大学を出ている人は、ものの考え方やリテラシーのようなものが、初等中等教育しか受けていない人と違うということがあるようだ。
たとえば、池上彰氏のような物知りの人に、ある事項の解説を受けた際に、「そうだったのか」と素直に納得するのが初等中等教育レベルの人であり、「他にも考え方があるのではないか」と疑えるのが高等教育を受けたレベルの人という気がする。
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問題を解ける人より仮説を立てられる人、定説を覆すことができる人を育てたいというのが、海外のエリートレベルの教育の特色といえる。
受験勉強で記憶力を身に付ける(p.156~164)
一言に記憶といっても、心理学では3段階に分かれると考えられている。
情報を脳の海馬にインプットする入力段階
これについては、よくするための条件が2つ
理解
人間は理解ができるもののほうがよく覚える。見栄をはって難しい参考書をやったり、分からないことを人に聞けない受験生は、だから伸びない
注意
⇒集中
脳科学の世界では、意外に集中力を上げるものとして注目されているのが音読と計算だ。
東北大学の川島隆太教授の健常小学生に対する実験では、勉強をやる前にたった2分間、音読や計算をやらせておくと、その後の迷路問題や単語記憶の能力が10%から20%上がるという報告がある。
陰山英男先生の百ます計算にしても、計算力ばかりが注目されたが、授業の最初にこれをやることで、生徒の集中力が飛躍的に上がるということのほうに教育効果があったという。
注意や集中力のテンションを落とすのはなんといっても睡眠不足である。
⇒関心
面白いと思って勉強することが大切
いったん入力された情報を少なくとも受験の日まで覚えておく貯蔵段階
大切なのは、復習。
和田式受験勉強法では、
翌朝の復習
1週間後の復習
1ヶ月後の復習
を習慣化することを強調している。
出力段階
結局のところ、出力のリハーサルしかない。
だからこそ、歴史のような暗記物とされている科目でも、問題集や過去問をやる意義がある。
脳科学の研究では、記憶は寝ている間に脳に書き込まれるので、暗記物については、寝る直前にやるのがいいという。
午前中に記憶するのと比べて24時間後の記憶量が倍近く違うという研究もある。
考える問題は頭の疲れていない午前中に
覚えるものは寝る前の2時間くらいに集中してやる
受験の低年齢化をどう考えるか(p.218~220)
ピアジェによれば、将来の計画を考えながら行動ができるようになり始めるのが、小学4年生くらいからだと言われている。
だとすると、それより早い年齢から受験勉強を始めさせても、親の計画に乗っているだけ、あるいは塾のカリキュラムにいわれた通りのことをやっているだけ、あるいはテストでいい点を取るための勉強、ということになる。
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今の時代には、小学校4年生からの本格的な中学受験勉強に勝ち抜くために、小学校2年生や、3年生、早い人なら1年生から中学受験塾に通塾することも珍しくないという。
これについては、親の経済力により学力格差が益々ついてしまうという問題はあるものの、子供が楽しんで勉強をしている分には問題はないだろう。
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この時期の子供は発達の差が大きいから、できない、分からないというのなら、無理をさせないに越したことはない。
抽象思考ができない時期に中学受験塾に行って挫折する子は少なくないが、そういう時期であれば、むしろ計算や、漢字の単純暗記のようにやればできるものをやらせたほうが賢明だろう。
他の子に勝っていることがあれば、自分のことを頭が悪いと思うリスクは低減するはずだ。
小学校受験について(p.221~222)
お受験で、子供に面白い問題をやらせることは能力開発のために悪いとは思わない。
ただ、親がエキサイトしすぎて、「なんでこんなものができないの」というような叱責をして、子供に自信をなくさせたり、あるいは、発達が遅いために、実際にできなかったりして、子供が自分は頭が悪いと思うリスクが心配だ。