福寿草 新しい「目」で、新しい「心」で、政令市新潟

トルベから聞かされていた

「チュソク　お前縁談を悉く断っているそうだが

心惹かれる人でもいるのか？」

「大護軍」

「お父上には　私から話を通しても良いが」

「いえ　その様な方は居りませんゆえ　ご心配無き様」

医員殿への想いを

胸の奥へ仕舞い込んで日々を過ごしていた

そんなある日　

チャン侍医が迂達赤兵舎の私の部屋へと来て

「プジャン　典医寺へとご足労願えませんか」

「今からですか」

「ええ　ウンス殿がお話したい事があるとおっしゃっています」

「某にですか？」

「はい」

「分かりました　侍医殿とご一緒なら」

「私はこれから王様に謁見せねばなりません」

「それでしたら　また日を改めて」

「大丈夫ですよ　典医寺には他の医員も薬員もおりますし

ウンス殿が今日が良いとおっしゃるので」

自分の言葉とは裏腹に

気持ちが弾み向かう足取りが早くなる

「ユ医員殿は　何方においででしょうか」

典医寺の入り口で声を掛けると

「プジャン」

懐かしいあの声が返って来た

「忙しいのに来てくれてありがとう」

花が綻ぶ様な笑みを投げかけられて　胸が高鳴る

「息災でいらっしゃいましたか？」

やっとの思いで　そう口にすると

「早くこっちに入って」と

手を取られ　部屋の中へと招き入れられる

掴まれたその場所が　熱くなる

「プジャンにお願いがあるの」

「某に願いですか？」

あなたの願いならば　この命さえ差し出せると思うのに

「今　迂達赤の隊員は何人居る？」

「今は百を少し切るぐらいです」

「そっか　勤務ローテーションはどうなってる？」

「ろー・てー・しょん？」

「あ～っとね　非番とか　働く番とか　順番があるでしょ？」

「はい　甲と乙と丙で　割り振っておりますが」

チュソクの言葉に指を折りながら

「三組ね　じゃ非番の人数は三十人位？」

「いえ　予備が要りますので　非番は十五ぐらいかと」

「十五人かぁ・・・

チャン先生と二人で七人づつ見たとして約一週間

あ～～でも何も無く穏やかな日だったらの話ですよね」

医員殿は何を知りたいのか

俺は余程困った顔をしたのだろう

「ごめんなさい　いきなりじゃ分からないわね」

そうして　その白い指を顎の所に持っていき　首を傾げる

その仕草に 胸が甘く疼く

「えっとね・・・健康診断　隊員達の体を調べるの」

「迂達赤の隊員は鍛えて居りますゆえ

病弱な者など居りませんが」

動揺しているのを悟られぬよう　冷静に言葉を選ぶ

「もちろん　分かってる　迂達赤ですもの　でもね　

今は良くても　いつ病になるかは誰も分からないでしょう

その為にするのよ」

俺の顔を正面から　じっと見つめて話をされる

「その　健康診断とやらをすれば　病が分かるのですか？」

鳶色の瞳に引き込まれそうになるのを　

言葉を繋いで冷静を装う

「う～ん　全ての病が分かる訳ではないけど

予防する事は出来るかもしれない」

男ばかりの迂達赤隊員をユ医員が診て下さる

そのような事を許婚である侍医は許すのだろうか

「チャン侍医は承知なのですか？」

ウンスは　訊かれた意味を直ぐには理解出来ないでいた

「えっ・・・・？」

（いけない　此処は高麗だった）

「大丈夫よ　医員は患者を男女で区別をしないし　それに・・・」

「それに　何でしょう？」