カメラが悲惨すぎる件について
いつも本当にありがとうございます。一葉です。
弊宅500記事を記念して、蒼々様からお与かり致しました原作沿い、記念リクエストの最終話をお届け致します。
お愉しみ頂けたら嬉しいです。
前のお話はこちらです↓
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■ 足並み揃えて ◇13 ■
朝、目が覚めたら敦賀さんの姿がどこにもなかった。
一晩中私を温め続けてくれた毛布は私をしっかりくるんでいて、けれど肩から腰まではだけていた体には、ゆうべ敦賀さんが着ていたシャツがかけられていた。
「 ……つるがさん? 」
力弱く上半身を起こして辺りを見回す。
山小屋は明るく照らされていて、太陽が昇っているのがわかった。
雨音はどこからも聞こえては来ず、外は目を細めたくなるほど眩しく見える。
「 ……つるがさん…… 」
けれど私にとってそれらは何の価値も無かった。
敦賀さんの姿が見えないことで不安が一気に噴き出した。
置いて行かれたのかもしれない。
もしかしたら呆れられたのかもしれない。
自分から服を脱ぎ、強く抱きしめて欲しい…なんて要求をした私の破廉恥さに敦賀さんは嫌気がさしたのかもしれないと思った。
雨上がりの朝はキラキラきらきら煌めている。きっとその魔法のような輝きで敦賀さんを誘い出したに違いない。
ひどい降りの時に外になんか出たくもないと、昨夜、あの人は言っていたから。
ノーブラのまま急いでワンピースを着直した。その時ささやかな膨らみしかない自分の左胸に一か所だけ赤い痣があったことに気付いたけれど、そんなのはどうでもいいと思った。
自分の体がどんな風になっていようがどうでもいい。
ワンピースの上に敦賀さんのシャツを羽織った。
きっと敦賀さんは外にいる。
そう信じて慌ててオープンテラスに繋がる窓に近づいた私に向かって、敦賀さんは清々しいほどの裏切りで私の後ろから声をかけた。
「 あ、キョーコちゃん、起きたんだ。おはよう 」
「 ……っっっ?! 」
振り向いて視界に入った敦賀さんはとても爽やかな笑顔を浮かべていて、シャワーを浴びて来たのだろう、タオルで頭を拭いていた。
その清爽さが無性に癇に障って、私は敦賀さんとの距離を一気に縮めた。
「 ……っっ!!どこに行っていたんですか!居ないなんて信じられない! 」
「 いやいや、居るよ。君より先に目が覚めちゃってね。だからシャワーを浴びて来ただけだよ? 」
「 あり得ない!敦賀さん、自分で言ったのに! 」
「 うん? 」
「 私たちは付き合い始めの恋人同士で、いまは待ち望んでいた二人きりのキャンプ中!なのに私の目覚めを待たずに一人でどこかに行っちゃうなんて信じられない! 」
敦賀さんが恋人設定なんて言い出して、だったらここぞとばかりに甘えてしまおう…なんて考えたクセに、いざとなったらどうしたらいいのか分からなくて戸惑っていた私が、ようやく甘えることが出来た昨日。
その余韻が自分の中に残っていたのだと思う。
正直、私はまだ全然甘え足りていなかった。
「 ……ちょっと待って、キョーコちゃん。俺はどこにも行ってないだろう?現にここにいるじゃないか 」
「 そうじゃな……っ… 」
そのときソファに置き去りになっていた敦賀さんの携帯が着信を知らせた。
正確にはこの仕事のためにアウトドアスポンサーさんが支給してくれたそれだけど。
発信して来たのは私たち二人のマネージャーの社さんだった。
『 おはよう、蓮。大丈夫か? 』
「 社さん、おはようございます。大丈夫です。すっかり雨は上がっていますよ 」
『 そっか。何事も無かったのなら良かった。キョーコちゃんは? 』
「 元気ですよ 」
「 社さん、聞いて下さい!!敦賀さんったらヒドイんですよ! 」
『 なにっ?まさかとうとう蓮が何かした? 』
「 しました!敦賀さん、演技の勉強になっていいだろうなんて言って、お互いに相手のことが大好きな付き合い始めの恋人同士♡…なんて設定をしたくせに、私のこと置き去りにしたんです!あり得ないですよね!役者失格です 」
「 ちょっと待て!置き去りになんてしていないだろ?俺は単にシャワーを浴びに行っただけじゃないか 」
「 それが置き去りって言うんです!付き合い始めの恋人なら仮に自分の方が先に目覚めたとしても待っていてくれるもんじゃないですか?それか、優しく起こしてくれるとか。
なのに一人でシャワー?あり得ない。それでよく私のことが大好きな設定とか言えますよね? 」
「 ……っっ!!だからだよ! 」
「 はい? 」
「 男には男の事情があるの!君に判ってたまるか! 」
『 ……ちょっと? おい、二人とも…。俺と通話中だって覚えてる? 』
「 なっ…なにそれ?!言われなきゃ何も判らないに決まっているじゃないですか!だったらそれを話して下さいよ、その男の事情ってやつを! 」
「 言えるかっ!だいたいそれを口に出来るなら君を寝かせたままになんてしていない 」
「 何で言えないんですか!話
てくれなきゃいくら理解したくたって出来ないじゃないですか。そうだわ!話せないって言うならいっそ態度で教えてください。敦賀さんレベルなら簡単に出来ますよね? 」
「 態度で示した所で君に判る訳ないだろう。昨日のあれだってどうせ演技の一環としか思っていないくせに 」
『 おーい。用があって電話をかけているんだから俺の話を聞いてくれないかー? 』
「 あれってなんですか!? 」
「 ……言っておくけど、俺は演技の最中にディープキスなんてした事ない! 」
「 は?…ってことはまさかあれ、演技じゃなかったって言うんですか?じゃあどういうつもりだったんですか! 」
「 ほら、言った所で理解不能じゃないか。あれだってね、俺としては精いっぱい自制した末だったんだ。そんなことすら君はちっとも判っていないんだろ? 」
「 自制?演技をセーブしてどうするんです!私が未熟だからですか!? 」
「 そうじゃないって言ったところでどうせ信じないだろ、君は!文句を言うぐらいなら拒否すれば良かっただろ! 」
「 なっ…そんなこと出来る訳ないじゃないですか!!せっかく敦賀さんが私にキ…… 」
『 ……ッッッ…シャラ ――――――― ップ!!!! 』
そのとき、今まで聞いたことが無かった社さんの張り上げ声が届いて二人で驚いた。
一瞬言葉を失って、5秒ほど間を置いてから敦賀さんと携帯に向き合った。
「「 …社さん、発音悪…… 」」
『 二人揃って言うことがそれか?!言っておくけどな、お前たちのその赤裸々な会話、この電話を通していまこっちの監視室に筒抜けだからな!スタッフ一同、口に手を当てて真っ赤な顔になってるわ!! 』
「 社さん。Shut upは使い方によっては黙れ…という命令形になるんですけど、大抵は違う意味で使う言葉なんですよ 」
「 え?そうなんですか? 」
「 そう。どっちかっていうと、本当に?…的に使われることが多いんだ。今風に言うとマジで?みたいな感じかな。shutの部分を伸ばし気味に、明るい口調で発音するのが通常 」
『 どうでもいいわ、そんなこと!!俺の話を少しも聞いていないだろ、お前達 』
「 やだな。ちゃんと聞いてますよ。ちなみに公の場では口にしない方がいいですから、気を付けた方がいいですよ、社さん 」
『 ご忠告どうも! 』
「 それで?用ってなんですか? 」
『 びっくり、聞く気あったか。昼過ぎにスポンサーが電力会社の修理マンと一緒に山小屋に行くからなって話だ。防犯カメラが動いていないのが困るからって。そっち、あれから通電していないだろ? 』
「 ええ。実はシャワーから出てくるのが水だけで…。おかげで少しだけ頭が冷えましたよ 」
『 良かったな。…で、取り決め上は4日間お前達二人っきりって約束だっただろ。だからそれを知らせたかったんだよ。お前たちはどうする? 』
「 そういう事なら俺達は午前中に撤退します 」
「 敦賀さん。窓ガラスとか割れちゃったのはどうしたら… 」
「 あ、そうか。社さん、二階の窓ガラス、割れちゃったんですよ。昨夜の風で大枝が飛び込んできて。雨戸を閉めて対処しましたけどね。階段上って右側の部屋だけなんですが 」
『 そうなのか?怪我とかは? 』
「 二人とも大丈夫です。…けど、部屋が水浸しになった上に真っ暗だったのでガラスが散乱したままなんですよ 」
『 了解。自分たちの荷物だけ忘れず持って出てくれればいいってさ。午後に到着する人間が総点検を兼ねて片付けると言ってくれている 』
「 ありがとうございます。じゃあ、簡単に掃除だけしてあとはお任せってことでお願いします 」
社さんとの通話はそこで切れた。
「 …ということで。キョーコちゃん、急いで撤退しようか 」
「 朝食はどうするんですか? 」
「 もちろん君の仕事が終わってから。昨夜は泣きながら君に縋られてしまったから振りほどくことが出来なくて、結局夕食は食べず仕舞いだったからね。朝食ぐらいはちゃんと食べないと 」
「 泣いてません!! 」
「 心では泣いていただろ。寂しい、一人にしないでって。……俺はね、嬉しかったよ。君に頼られて 」
「 ……っっっ!!! 」
「 キョーコちゃん。悪いけどその恰好のまま朝食の支度出来る? 」
「 ……できますけど 」
「 昨夜、濡れてしまった君の服は細かいガラスの破片が付いているだろうから洗濯は諦めた方がいい。その代わり、帰りの途中で俺がぜんぶ買ってあげるから。それまで俺の下着で我慢して 」
「 いいですよ、敦賀さん。そんな!! 」
「 遠慮しないでいいよ。可愛い恋人の為ならなんてことないから 」
「 ……なんか、それって本当につき合っているみたいですよ。ラブ度高めの恋人設定はこの仕事の間だけですよね? 」
「 キョーコちゃん、もしかしたら知らない?こういうのは家に帰るまでが仕事だろ? 」
敦賀さんのそのセリフで思わずプッと吹き出した。
「 そういうの、子供の頃に聞いたことがあります 」
「 だろ 」
「 どれだけ甘々なんですか。なんだか帰るのが勿体ない気がして来ました 」
「 じゃあ、帰るの、やめにする? 」
真夏の太陽に負けない、神々しい笑顔を振りまかれて言葉がつまる。
帰る…と言われて本当に終わりなのだと思った。
4日間はあっという間で全然甘え足りなかった。
「 出来る訳ないじゃないですか、
ップ俳優の敦賀さんが。……名残惜しいですけど、長かったようでとても短かい4日間でした 」
「 俺も。欲を言えばもう少し君に甘えて欲しかった。いっそ延長したいぐらいだ 」
「 えー?恋人設定のですか?カメラの無い所で? 」
「 うん。そうする?うんと甘えさせてあげるよ? 」
「 あははは。それは嬉しいですね 」
「 本当に?じゃ、俺と一緒の家に戻るか。お疲れ様会、二人でするっていうのはどう? 」
「 ……本当に? 」
「 本当に。そこで聞かせてもらえる?さっきの話の続きを 」
「 話?なんのですか? 」
「 さっき途中で切れちゃっただろ。せっかく敦賀さんが私にキ…って言ったその先をきちんと聞きたいと思ってね 」
「 ……っ!! 」
「 君が正直にそれを告白してくれたら、俺も話してあげる。男の事情ってやつを詳しく 」
「 ……私にはどうせ判らないって言ったくせに 」
「 思い直した。分かってもらえないなら判らせればいいって。ま、それよりキョーコちゃん。いまは早く朝食!俺も手伝うから 」
「 はい、ありがとうございます 」
オープンテラスから空を見上げて、白いヤドカリを見つけた。
敦賀さんと迎えたキャンプ最終日の朝は、初日と同じ真っ赤な太陽。青い空と白い雲。
二人で朝食を摂ったあと、色々な片づけを済ませた私たちは、波乱万丈で笑いの絶えなかった4日間のキャンプ生活に別れを告げ、お世話になった山小屋を後にした。
二人揃って肩を並べて。
E N D
お付き合い頂きまして有難うございました!!
お預かりいたしましたリクエストは、本当は「動物園や水族館などのテーマパークでの1日デート」でした。
出来ればテレビ企画のお話ということで、その中で「最低1回どこにでもいいから相手にキスをすること」を入れてもらいたい、と頂いておりました。
しかし蓮とキョーコがTV企画でデート…という内容は過去に多くのマスター様が執筆済みということと、リクエストを下さった蒼々様が、「一葉テイストのお話で読んでみたい」とおっしゃって下さっていたので内容をガラリと変えてしまいました。
蒼々様のこだわりはあくまでも二人がはたから見るとこれでもかというぐらいイチャイチャなラブバカップル。第三者から見るとダダ漏れで、別の意味で放送差し止めのお蔵入りになっちゃうかも!?ぐらいのが見たい…ということでしたので、最初っから飛ばすと息切れして続かないので山を登る要領で徐々に濃度を上げて行ったつもりです。
……が、振り返ってみると割とリクエスト通りじゃないかも?
取り敢えず1日デートは4日間のキャンプに変更。最低1回(出来れば山ほど)キスをする…は、萌えシーンをふんだんに盛り込む、に形を変えて一葉テイストでお届けさせて頂きました。
ちなみにラストは両想いでも両片想いのままでもどちらでもOKということでしたので、気負わず執筆していった結果、曖昧なままに(笑)
予定より長くなってしまいましたが少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
お付き合い頂きまして有難うございました。
そして蒼々様、大変お待たせ致しました!
一番乗りリクエストでしたのにラストまで待ってくださって本当にありがとうございました!!
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◇有限実践組・主要リンク◇
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カメラの品質・価格にこだわった商品をご提供
お姉ちゃんはカメラ係でした
カメラも、こだわって選びたい!
そう…時代劇専門チャンネルの…
作詞:西沢爽 作曲:和田香苗
1北風にむかって 僕は叫んだ
北風にむかって 僕は叫んだ
どこまでも僕と いっしょにおいで
頬よせてゆこうよ ああ この道を
北風にむかって 僕は叫んだ
春が来るごらん あの山越えて……
2北風はつらいと 君は泣いたね
こごえてる指を あたためた僕
北風はつらいと 君は泣いたね
黒髪が風に むせんだあの日……
今日からは僕たち
かなしみの涙は ああ ふりすてて
北風はつらいと 君は泣いたね
春が来るごらん あの山越えて…
カメラのない明日か。
エターナルフォースカメラ
けど)
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